歯科クリニックの看板キャラにおけるキメラこと歯化獣（シカジュウ）について

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歯科医院の戦いは熾烈だ。

日本全国にある数で言うと、コンビニが約5.5万軒あるのに対して7万軒弱もあるという。統計を見ると、年ごとの医院数増減は決して大きい数字ではないが、新規開業数と閉業数が似たり寄ったりと考えると良いだろう。

そもそも歯科医院って潰れるの？という声さえある。事実、廃業は多い。オーラルケア意識が高い人であっても、2,3ヶ月に1回同じドクターに診てもらう。そうでなければ年に1回行くのが関の山…数年通っていない人もいると思う。気づかないのも無理はない。歯列矯正を地元で受けていれば、かかりつけは必然的に少なくなる。余談だがTinderでドタキャンする女性の理由で一番多かったのが「朝イチで地元の歯医者に行く」だった。メッセージを無視してすっぽかさない誠実さ、シリアスさを感じさせない科選び、口腔衛生の維持・向上を求めるマメさ、君は絶対、いいお母さんになれる！

さて、これから毎月来てくれなんて言われたのが最期。この広い世界には、渡り鳥のごとく歯科医院をコロコロ変える、E-PARKヘビーユーザー兼初診料払いすぎ成人男性も存在する。他でもなく、私である。

※E-PARK:歯科医院の予約プラットフォーム兼アプリでは電子診察券を提供しているサイト。上述の理由で、私は電子診察券が使える歯科医院にだけ通うことにしている。紙はかさばる。

そこで気付いたのは、大きく分けて歯科医院（のキャラ）は2種に分かれる、ということだ。（ちなみに「ゆるキャラ」ではなく「キャラ」と呼称しているのは、”ゆる”キャラだと歯槽膿漏っぽいかなと危惧しているからです）

どういった２種に分かれるのか？

①歯 ②動物

である。そのどちらの要素も兼ね備えている複合型のキメラを

③歯化獣（シカジュウ）

と呼ぶ。④その他のものは分類できないほど様々あり、あえて細かくジャンル分けせず、モンドミュージックのようにそれがそれであるおもしろさを各人で楽しんでいただくことにする。YMOの細野晴臣もそういう音楽に対してそういう態度を取っているし、Apple Musicで好きなバンドを無思慮にオルタナティブ・ロックに分類されるのって心底嫌ですよね？だから記事の箸休め的に発表します。

問題は③の歯化獣である。足を運んでもいいかな、と親近感を持たせるのが病院・クリニックにおけるキャラの役割であろう。しかし、最後の最後に紹介するキメラだけは求心力が全く違う。ぜひとも足を運びたい、と思わせるのだ。私が、精神の知覚過敏だからかもしれないが。では順番に見ていこう。

1-1. 歯そのもの

体感では一番多く見られるがこのタイプ。これは誰もが歯科医院を思い浮かべるでしょう。

1-2. 人格を持ちはじめた歯

1-1. との決定的な違いは、歯に人格があるかどうかだ。目があり、手があり、足があり。服を着ている。

特に4枚目の衣服をまとう歯に人格があると思うのは、こんな歯のキャラにも恥の感覚さえあるように思えるからだ。「恥のないところにエロスはない。カバの交尾と同じだ」と言ったのは村上龍だが、カバの交尾よりかは、恥の感覚において、この歯のキャラに軍杯が上がったといっていいだろう。そして、4枚目の彼女の服という名の歯茎をそっとめくり、有機物臭い隙間という名の歯周ポケットに超音波スケーラーをスーッとしのばせる。どどめ色をした肉びらという名の歯肉溝にｳｰｯ, ｳｰｯ, ｳｰｯと振動を与えるとどうなるだろうか？ほうら、こんなにもいっぱい出てきたよ…（歯垢が）と、なるのは想像に易い。待ち受けているのは、定期検診という名の電車（©︎テネシー・ウイリアムズ）だ。

1-3. 「歯」と「は」の文字をいじる

歯か動物かと言われれば、歯に属するかなと。色んな「歯」と「は」が見られて、日本語の書記体系が複雑でよかったと思う。

閑話休題１

さて、いろいろと歯の看板を見てきたが、ここでモンド・デンタルクリニック看板を見ていこう。特筆すべきは最後の写真。歩いている馬の体と4本脚と地面に囲まれた部分が歯のシルエットとなっている。この離れ業は、そこに何があっても歯のことだけを考えている人間にしかできない。

確か、NARUTOで螺旋丸という必殺技を習得するときに、白い紙だけを見続けろという訓練があった。師匠の爺さん・自来也が黒い点が描かれた白い紙を見せて「お前の集中力は白い紙から黒い点に移った。白い紙だけを見ろ」と要求するシーンがあった気がする。（超うろ覚えです。NARUTOかどうかも怪しい）

お前は空間から歯だけを見出せ、と訓練された人にしか見抜けないのではないか、この馬の歯は。

1-4. りんごと歯

デフォルメした歯に、ちょうどデフォルメしたりんごの形が近似しているからかよく見られる組み合わせ。5枚目のYamamoto Dental Clinicは看板の内側を白色（＝歯）に、外側を赤色（＝りんご）にしており、吊るしている金属を果梗のように見立てていて素敵。

2. 動物

さて、肝心の動物キャラである。実のところ、その数は歯キャラと比べるとかなり少ないように思う。紹介した他に、鹿、らくだ、カバ、ビーバー、クマ、タヌキが見られた。

歯科とかけているのか、鹿が、カバなど歯が印象的な動物よりも多かった。多くの患者は歯牙にもかけないだろうが。

当たり前の話だが、上に記した全ての動物には歯がある。タコ、イカ、カタツムリ、クリオネなどはこうした看板に登場しないだろう。逆に言えば、サメやカニが看板に採用される可能性だってあるわけだ。カニが泡吹いてるのなんてちょうどいいだろうに。

しかし、ゾウには歯の印象があまりない。カンガルーはかわいいからよしとしよう。ゾウの歯も、見たことはあるが、幼少期の残酷さなのか、私の記憶ではなかったことにしている。毛もないことになっている。大山倍達より強い唯一の動物として、本能的に畏怖の念を抱いていたのかもしれない。ともかく細部までゾウを思い出せないのだ。

ちなみに私は、かわいい動物が歯をギラギラさせているのが苦手だ。『金色のガッシュ！』でウマゴンが歯をひん剥いてガタガタいわせているシーンが特に苦手。プロレスラーの衣装も同様な理由でギラギラが苦手だ。歯単体のキャラとは異なる難しさがあると分かった。