マニラの配車サービスで見られる車内用手作り扇風機シーンの調査

新型コロナウィルスによる制限も緩やかになった昨今、私は家族とフィリピンの首都マニラを訪れました。

フィリピンの経済成長を支えるマニラでは多くの人々が街を行き交い、想像よりもずっと発展していることに驚きました。私が訪れるつい1ヶ月前は、マニラといえば広域強盗殺人による「ルフィ」と名乗る者が現地で発見され、その治安の悪さがより濃く印象付けられました。心配に思いマニラの「地球の歩き方」を熱心に読んでみたところ危険地域の把握の推奨・美人局による日本人被害の一例、“避けろ!メータータクシー”等読めば読むほど不安が増し、果たしてこの地に3歳の子供を連れても良いのだろうかと心配しましたが、結果としてはストリートチルドレンに誤ってお金を渡してしまった程度で無理やり金銭を取られることもなく無事に帰国致しました。

↑マニラの経済を支えるBGCエリア。このエリアで優雅に犬の散歩をするのが流行りのようで、中には小綺麗な猫を連れて歩く若者もいました。

 

治安の悪さが部分的にあることも事実ですが、フィリピン人の多くは人当たりがよく我が子を見ては笑顔で接してくれました。

移動の際は「地球の歩き方」の指示通りメータータクシーは使わずGrabという配車アプリを使用していました。Grabは所定の場所に車を呼ぶことができ、その距離と時間に見合った金額があらかじめ提示されます。カード情報を入れておけばクレジット決済ができるのでドライバーと金銭のやり取りをする必要がない便利で安全なサービスです。近年マニラではGrabのサービスが浸透し配車台数も増え、旅行客はもちろん現地の人もGrabで移動する人が増えたそうです。

↑Grabを利用した記録。だいたい9kmくらいで319ペソ(800円くらい)。9kmはだいたい渋谷駅から池袋駅の距離感です。

 

そんな訳でマニラでは10回程度Grabの配車を利用したのですが、Grabでお迎えに来てくれた車は基本的にGrabに認定された一般人の自家用車なので「フィリピンで人んちの車に10回乗った」ことになります。

↑Grabではコンパクトカーからワゴン車まで様々な大きさの車が配車されています。マニラでは日本製の車が多く、なかでもトヨタと三菱が多かった印象です。

5人乗り程度のコンパクトカーに乗った際には、空調を快適に保つために後部座席に小型の扇風機が設置されているケースが多くありました。今回乗った10件中4件は扇風機が付いていました。その取り付け方にドライバーの個性が感じられたので今回紹介したいと思います。

■めっちゃ長い板

長い板を助手席のヘッドレストに取り付け車内のちょうど真ん中に扇風機が稼働できるよう工夫されていました。真ん中に設置されているのは端の人も平等に風があたるようにという配慮の他、ルームライトからの電源確保のためでもあるのでしょう。よく見ると扇風機の右横にも穴が開けられているので、長い棒をやや短く調整することも可能なのかもしれません。

■目が乾きにくいで賞

こちらも助手席に取り付けられた扇風機の様子ですが、先ほどと違うのは扇風機が取り付けられた向き。上を向いてます。これは賢いです。運転席に扇風機が向かい合わせで取り付いた車にも乗ったのですが、目が乾くためサングラスをかけて回避しました。このように取り付けてくれると直接風は当たりませんし、エアコンの風をかき混ぜる効果があり車内全体に冷房が効きやすくなるのではないでしょうか。取り付けを結束バンド行っているところもスマートです。

■すごくない?

運転席と助手席に取り付けられていたのは、よく見ると扇風機ではなくpcの冷却ファン。車が走り出すとキュルキュルという音とともに回り出しました。どういう仕組みになっているのかはわかりませんが、金属片をヘッドレストに挟んで取り付けられています。この方の車は車体はボコボコでヘッドライトのあたりが金属の部品でつぎはぎするよう補正されていたのですが、少々物騒で簡単にいうとヤバイ車のように感じましたが、pcの冷却ファンで私たちに涼を与えてくれる辺り物持ちの良く大抵のものは修理したり工夫して日常を過ごしているのかもしれません。(運転もそれなりに安全運転をしてくれました)

Grabでは利用者がドライバーの評価をしたりチップを送る制度があるので、不正が行われにくいことはもちろん利用者への気配りや配慮が感じられることが多くありました。今回の車用扇風機も自家用車なので自分や家族のためだということもあるかもしれませんが、利用者へのサービスの一環であると思われます。扇風機を取り付けるためにあの手この手と工夫されたドライバーの匠の技は心に響くものがありました。

もし他国で自家用車に扇風機が取り付けられていた際は注目してみてはいかがでしょうか。