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実家の犬が一向に私に懐いてくれない。実家に帰る度に吠えられ、噛まれそうになる。
だけど実家の犬は可愛い。
これは何をしているのかというと、実家の犬が布団と布団の間に挟まれている様子である。こちらが挟んだわたけではなく実家の犬が自ら挟まれにいった。
どうも狭いところが好きらしい。一緒だ。私も布団に挟まれるのが好きだ。押し入れに入るのも好き。多分狭いところが結構好き。
いつか実家の犬と仲良くなれたら一緒に布団に挟まってみたいと思う。
狭いところといえば、建物の壁と壁の間が気になる。向こう側が見えたりするとロマンを感じる。同じ時間が流れているはずなのに時々違う時間というか、違う世界が見えているような気分になり、いいもの見たなという気持ちになる。
建物と建物の間から海が見えたりした時には妙に感動する。薄暗い通路に太陽の光が差し込む感じも綺麗だ。壁と壁の間からちらりと海が見える良さは、いつも優しい人よりも優しさが垣間見える人にグッときてしまう感じと一緒だと思う。
薄暗い通りを抜けて思わぬ世界に遭遇すると確かにテンションは上がる。たまたま行った五反田ででかい馬が現れた時には心が踊った。
だけど壁と壁の隙間から美しいものや驚きの何かが見えてくることだけを期待している訳ではない。特に上記2枚の海と馬はたぶん狙ってる。計算された設計なんだと思う。確かに海も馬もいいし心は踊った。でももっと自然体で狙っていないものでもいい。
例えばこの狭い隙間。建築基準法では建物と建物の間隔を50センチは空けないといけないはずなのに基準をクリアできていないこの貴重な隙間を覗いて見た時に
「ゴミすて禁止」が見えた時はすごく嬉しかった。
壁と壁の間の先にコアラのマーチ焼きのメッカを発見。
壁と壁の向こう側に配色がパイロンと一緒のおじさんが座っている。狙っていないのにすごい。
地味でもささやかでも気分がいい。
だからといってとりわけ何か見えなくてもそれはそれでいい。
壁と壁の間はいつだって自由なのである。
このようにいいないいなと壁と壁の間を舐め回すように観察していると、あることに気がついた。
どうやら往々にして、壁と壁の間はあまり見られたくない秘めた場所であるようだ。
木や植木などで隠すパターンはよく見られる。
また狭いところが大好きな人にとっては「入ってみたい」と欲望を掻き立てられる場所でもあるのだろう。時々私もちょっと入りたくなる。某テレビ番組で加藤紗里らが壁と壁の間をすり抜ける企画も記憶に新しい。たぶん結構な人が壁と壁の間に挟まったりくぐり抜けたい欲を抱えているのだと思う。
だから私有地である壁と壁の間には小さなドアが設置されるケースが多い。
しかし魅了的な壁と壁の間は、時折何者かに襲撃される。
いい匂いを発しているわけでもないのになぜか人々を寄せ付けてしまう。
壁と壁に挟まれながら描いた自己主張。描いているところを想像すると地味である。
壁と壁の間は安心感があるのだろうか。
喫煙コーナーにされるケースも多いようだ。
さらにこちらでは人ではなく猫を確認。
なかなかいい顔をしている。
このように一般女性からギャングスター喫煙者や猫までも虜にしてしまう魅力が壁と壁の間にはなぜかあるようだ。しかし持ち主からすると女子供猫にまで寄り付かれるのは困り者である。
だからドアではなくシャッターでより厳重に警戒したり
ギチギチに何かを納めてみたり
コンクリートで埋めたり
テトリスみたいに上手に隙間を埋めて警戒するようである。
◆◆◆
さてここからは一般女性が観察した壁と壁の間からいいなと思った間を紹介していきたいと思う。
◆ヒルナンデスで紹介されそうなキラリと光るセンスに脱帽
お隣さんとの壁と壁の間に100均で売っている白いフェンスを上手く曲げて壁と壁の間を封鎖。耐久性はイマイチだが塗装したオリーブグリーンのシャッターとアクセントに飾られた植物とのバランスが良く、閑散となりがちな壁と壁の間に爽やかさを演出している。目隠しとしての効果はなさそうだが、覗いてみても奥が暗すぎてよくわからないのでこの高さで用は足しているのであろう。多分このお宅は洗剤などのラベルは全部剥がして生活感を消したいタイプのご家庭かと思われる。
耐久性★
オシャレ度★★★
目隠し★
◆アースカラーで統一感を。色味を抑えたストリートスタイル
地球の大地や植物などの自然物をイメージしたアースカラー。そんなシックな壁と壁の間には色味を抑えた回転式の扉が採用されている。壁と壁の間に回転式の扉を使うことは珍しい。扉の錆びがアンティーク感を出しておりいい雰囲気が出ている。そんな扉にギャングスターも敬意を払っているのだろうか、ステッカーや落書きの色味を抑え景観に配慮している様子である。
スタイリッシュ度★★★
目隠し★★
ストリート★★★
◆Think Simple
物事をシンプルにすることはなかなか難しい。減らしすぎると片手落ちになってしまうが、入って欲しくないんだなということがよく伝わるデザインである。この黒い物はなんなのか触って確認してみたがなんの材料かよくわからなかった。感触はゴムホースに近い。よーく見ているとダッフルコートに見えてくるのは気のせいだろうか。
耐久性★
シンプル★★★
目隠し★
◆防犯と収納を兼ね備えて一石二鳥
まず「引越」の文字に目がいってしまうのだが、ここで注目すべきは壁と壁の間。侵襲を遮る用途の他、収納としての役目も果たしている。大きめのプラスチックケース・鉄パイプなどが敷きつめられる様子から土木関係者の住む家かと推測。
耐久性★
男臭さ★★★
スタイリッシュ度★
◆ツンデレ
壁と壁の間を柵で閉鎖し、さらにその上から金網を敷き詰めて足りないところは有刺鉄線でぐるぐる巻きにしてかなり頑丈にブロックしている。寄せ付けないぞオーラ満載のこちらですがよく見て欲しい。右下の一部分だけなぜか丁寧にくり抜かれている。ちょっと失礼してこちらの穴を覗かせていただくと
Instagramのように四角く切り取られた風景が。殺伐と奥の方まで生い茂る草がジメッとしていてなんか良い。覗き穴として持ち主があえて切り取ってくれたのかは知らないが、そうであって欲しいと思う。
耐久性★★★
警戒度★★★
やさしさ★★★
◆◆◆
ところで様々な壁と壁の間をジロジロ観察して私が見えてきた物は一体なんだったのかというと、冒頭部分で語った「同じ時間が流れているはずなのに時々違う時間というか、違う世界が見えているような気分になる」ということである。
100均で買ってきた白いフェンスを曲げて固定するマダムの姿、壁と壁の間に挟まりながらラクガキをするギャングスターの姿、昼寝に飽きた猫が通りすぎる様子など、幻想のような現実のような景色が浮かんでくるのだ。
これは近所で撮った壁と壁の間である。暗くてよく見えないがよーく見ると干からびた水路が奥の方まで続いている。うちの近くには川などないのだが、おそらく昔はこの水路に水が流れどこかに繋がっていたのだろうと想像する。多分そこそこ綺麗な水でカエルとかいたんじゃないかなと。知らないけど。
暗くて映らない干からびた水路をiPhoneで撮る。壁と壁の間を覗いていいもの見たなという気持ちになった。