デトロイトの名物と言えば、メタル、テクノ、銃犯罪とは言ったものですがそんなバラエティ豊かなデトロイトにおける数少ない観光地の一つが今回ご紹介する「Heidelberg Project(ハイデルバーグ・プロジェクト)」。簡単に言うとデトロイト郊外のあまり治安のよろしくない地域に突如として出現した住民によるアート作品群の事です。
発生したバックグラウンド含め、こちらでは比較的有名な場所なのですが恐らく日本では若干紹介はされてはいるものの、治安の面からあまり推奨もされておらず殆ど知られていないのではと思います。
名前の通りハイデルバーグという通りにそのアート群は出現します。
80年代半ば、デトロイトダウンタウンの東側にあるMcDaugall-Huntという地区に住むTyree Guytonという人の活動から始まります。この地区は元々アフリカ系アメリカ人が多く住む地区と少し行けば大豪邸の立ち並ぶ地区とが隣接するような貧富の境界にあるような場所。現在ではやや落ち着いているもののかつてはそれなりに治安の乱れた場所でもありました。
80年代、デトロイトの自動車産業の衰退で失業者や犯罪率が増加すると身の危険を感じた人々は郊外へ離れかつて180万人を超えたデトロイト全体として人口は一時は70万人と大きく減少しました。デトロイトが荒廃したその時代にスラム化が進み、人々が家を手放し郊外へ離れていく中で兵役を終えてこの地へ帰ってきたTyree Guytonはその荒廃ぶりに驚愕して、簡単に言うと「アートで街をよみがえらせたい」と始まったのが今回ご紹介する作品群です。
(私より詳しく正確に解説している日本語サイトも幾つかりますので興味のある方はぜひご覧ください。)
デトロイトのダウンタウンというと連想されるのは犯罪都市という事でイメージがあまりよろしくないとは思いますが、日中であれば数人のグループであれば訪れて歩いて回っても差し支えない場所かと思います。日没後はあまり近寄らない方が良いと思われる地域であることはお伝えしておきたいところです。
では本題へ。早速通りに入っていきますと一見すると何の変哲もない街路樹に囲まれた通りですが、すぐに異常にはお気づきになられるかと思います。
平たく言いますと路上に廃棄物がせり出しており、歩行者に何とも言えぬ圧をかけております。
それらがアートであるという事に気づくにはそれなりに歩みを進め、
個々のモノたちをしっかり観察していく必要があります。
つまり、雑然と置かれたゴミと見間違うモノの中から段々とそれらが収集、整理され飾られたものであると気づくはず。
人物のイラストの描かれたブロックの上に並べられた固定電話。
ブラウン管型のテレビ。
ノアの箱舟をイメージしたんでしょうか。廃ボートの上に廃マネキンや廃動物模型。
ものすごい量の靴。
使われなくなった子供用の車型のペダル式や電動の乗り物が一か所に。
カートの墓場。
雑然とした中にもそれなりの秩序がありますが
途中で破壊された中途半端さも目立ちます。
個々の解説なしには完全には理解できないものの、随所に見られる皮肉の効いたアイテムにはこれはやはりゴミ置き場ではなく何かを表現するアートなんだなと感じさせられつつ、
どころどころ破壊されたことによる不完全さもあって不気味さを感じずにはいられません。
意味を理解できずとも絵になる展示物も多くこのような光景ながら観光客が訪れるのも頷けます。
こうした雑然としたモノがこの通り一面に自由に広がっているというのがこのハイデルバーグ・プロジェクトの私が見たなりの概要です。
元々は様々な人のサポート、時には周辺の子供たちも参加したりなど、壮大できちんとしたテーマに沿ったコンセプトを示したアート作品群があったと聞きます。
機能しているどうかは分かりませんがこのようなインフォメーションセンター的なものがあるようにここには管理者がいて、見に来る人たちは一応歓迎されていると聞きます。(この通りだけは24時間監視カメラが作動しているそうです)
この規模を個人が長年同じように維持するのは難しく、また残念ながら時に破壊・放火もあったりなどして現在のような一部だけが残った中途半端な状態になったことから現在ではここに並ぶアート作品の表現する内容の幾つかは真意が理解されぬまま、その奇妙な見た目だけが面白がられている部分もありそうです。
ここまでくると展示品かガチのトイレか分からんですが、これは一応ここを観に来た人用の簡易トイレ。入ってよいのか迷いますね。
この通りにあって唯一割とまともなナリをしている右側の家には住人が住んでおり、このアート作品を長年展示し続けているとのこと。訪れたこの日も右側の白い家からは生活音があり、駐車場には車もありました。
(調べたところでは現在はこれらは別のアーティストが買い取り、アートスタジオ、ギャラリーとして運営されている模様)
先ほどの家にのみ、アート作品の管理も兼ねて唯一の住人が暮らしていると聞きましたが、郵便屋さんを観察した限りだとこの通りには少なくとも二軒の家で住民が暮らしているようです。
もう一方の住民がこちらの猫。アメリカで野良猫は殆ど観ませんが、人が全くいないからか割と自由にこの通りで遊んでおりました。
この様なここ最近のネタも見られることから、アート作品は現在進行形で増えている可能性もあります。
なかなか来ることは出来ない場所かもしれませんが機会があれば是非。一応、観光者の歓迎はされてます。
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