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規模の大きな建設工事が行われている際、その周囲には白い仮囲いが建てられます。
それを誰もが目の当たりにしたことがあるはずです。
このようにパネルを連ねたものです。
その白いパネルに沿って進むと必ず角に出会うことでしょう。
昨今の仮囲いの角は、出会い頭の衝突を防げるよう、視界を通せるクリアパネルになっています。
私はこの透明な角を「角ディスプレイ」(かどディスプレイ)と呼ぶことにしました。
先日、念慮に念慮をかさね編み出した造語ですが、時間をかけた割に釈然としていません。
思い入れが生まれてしまう前に、もっといい命名を与えてくれたらそちらに乗り換えます。
この角ディスプレイを発見、調査しているうちに、あるひとつの共通点を導き出すことに成功したので、報告いたします。
その共通点とは、
たまに中に植物が入ってる。です。
植物、といってもその殆どが造花のプランターなのですが。
この日の夜は急激に冷え込んだため、外気との気温差により、自販機や公衆電話の中、走っている車のヘッドライトの中さえも曇っていました。
同様に角ディスプレイ内も曇っており、まるで呼気を繰り返す生花が入ってるように見えましたが、入っていたのは造花のプランターでした。
これが「角ディスプレイ」と命名した所以です。
私が発見できた角ディスプレイの殆どが、組まれた骨組みばかりが見える余剰空間です。
それだけあって、稀に発見できる造花の入った角ディスプレイに歓声をあげてしまいました。
今回は私が実際に喜びのあまり歓声をあげた角ディスプレイの面々を紹介していきます。
とある建設現場の一角です。
私はこの角ディスプレイに出会った時「もうすぐクリスマスか、早いもんだ」と十人並みの感想をこぼしていました。
空間を有効に活用し、十二月の到来に合わせた飾り付けがなされていて大変見応えがあります。
夜に訪れた時に初めて、イルミネーションが施されていたことに気づきました。
とはいえ、洗練とは程遠く、不遜と思えるほど媚びのない佇まい、逞しい。
同じ建設現場のもう一角も、クリスマスカラーに仕上がっていました。
この建設現場で何が建とうとしているのかわかりませんが、現場の納期と同時に、これは無くなってしまうんだなと考えてしまうと、悲しい気持ちになりました。
続いてはこちら。なんと
もしかすると生きてるやつです。
果敢にもワントップ。空間をひとり持て余し、景観の美化に加わるわけでもなくただただゆるりと伸びています。
キャプションがついていないだけで、これはほぼインスタレーションアートといっても過言ではないでしょう。いや、キャプションがついてないからこそ、かもしれません。
この角ディス(角ディスプレイ)は傍に立つ牛丼ののぼり旗の色彩も相まって、今回発見した中で一番絢爛豪華です。
専用の台座に人工芝が敷かれてあり、その上に造花のプランターが端正に配置されていました。
「洗練されてるというよりも、こなれた感じすら垣間見える、こんな角ディスは見たことがない」と思い、すぐさま調査してみたところ、このパネルの向こうで高級マンションの建設が着々進んでいると知りました。
通りでこのように見たこともない種類の花を使っているのか、と合点がいきました。
最後は私が一番気に入ってる角ディスプレイです。
角が落とされ、もはや面、ただのディスプレイになってるのですが
今回発見した角ディスプレイの中でも一番主張が強く、魅せにきているにもかかわらず、てらいがなくとてもいたいけなのです。
プランターが一列じゃなく、前後に蛇行するようにレイアウトもされていて、一応の飾り気を演出しているところが、とても慎ましく微笑ましい。
なんか四人組アイドルに見えてきた。
今回、角ディスプレイの調査をしてわかったのは、
<私は、人の作為の介入が希薄なものに惹かれやすい>といった自分自身についての見解でした。
つまり角ディスプレイとは、私自信を映すディスプレイでもあったのです。
などと無茶苦茶うるせえことを言って終わりにします。
角を落とした所にむき出しの造花、というバージョンもありました。もしかしたらこれが一番好きかもしれない。