アウト・オブ・サービスの様々な表現方法についての観察

「故障中」「修理中」「休業中」などといった一時的ないわゆるアウト・オブ・サービスの状態を示すには一般的にはまず張り紙に頼るものです。文字でお知らせするのが一番簡単。でも、街に目を向けてみると色んな表現方法を用いてアウト・オブ・サービスを表現する方法があるようです。色々と見ていきましょう。

 

故障中という現象はそれ自体が通常外の貴重な状態で見かけると嬉しくなるものです。故障は頻繁にするものではなく、また重要なものであればあるほど修理は迅速に行われるため滅多に見られない刹那の現象ともいえます。そうなると、それとセットで状態を示す張り紙もまた貴重なものです。故障したときでしか目にすることの出来ない「故障中」の張り紙を見ると得をした気分になるというもの。

 

OUT OF ORDER(故障中)

故障は一時的なもの、突然訪れる不測の事態、予期せぬアクシデント。張り紙だっていつも用意されているわけではないから手書きで間に合わせのものが宛がわれることも多くなります。それも故障中、修理中の醍醐味。即席の、色んな張り紙との出会いの場でもあります。

 

これはトイレに備えてある手拭用のウェスがそのまま使われたケース。現地調達です。一時的な場しのぎのつもりがこの状態で数ヶ月ということも多々あります。

 

強度面からダンボールが用いられることも多いです。テープはすぐはがれそうですけどね。

 

こちらはフランスの方から頂いたもの。HORS SERVICE、故障中。世界中の張り紙が見てみたいものです。

 

故障は貴重、刹那の状態と表現してきましたが、実際にはアメリカではトイレに行くと高い確率で故障中の便器があります。この写真が示すとおりアメリカの便所は故障中の張り紙に加えてゴミ袋でガードされていることもしばしば。

 

移民国家、多民族国家ゆえか、張り紙だけでは心もとなく物理的にガード。英語が読めない人も多いということなのでしょうか。

 

便器画像が続いて申し訳ありませんが、このパターンをもう何度も見てきました。並べてみると結構面白い。

 

故障便器にも注目してみると実際にはこうして張り紙すらない便器も結構あります。無愛想ですね。でもビニール袋を被せてしまえば張り紙など書かずとも伝わるだろうと、そういうことです。

 

こちらもやはり同じ。ビニールを被せることで「アウト・オブ・サービス」を端的に表現。アクセス出来なければそれが稼働中とは誰も思いません。無愛想なようで一番シンプルな表現です。

 

似たものがベトナムの街にもありました。街に目を向けてみると何かを被せることで、文字を使わずにわかり易く営業外、故障中、サービス外などを表現している場面に遭遇します。こちらはお店の看板キャラクターに袋を被せることで「やってないよ」を表現している飲食店。故障した便器と発想が同じ。マスコットの顔を隠すという実に記号的な行為で準備中をアピール。

 

ちょっとわかり辛いですが、コーヒーサーバーの取ってのところにカップを乗せることで「空ですよ」を表現していました。これも張り紙の代わりに用いられた言語に頼らない非稼動の表現。

 

こちらはタイ。椅子がきちんと4本の足で立っていたらあるいはそう思えなかったかもしれませんが、「椅子が立てかけられている=この状態から動かさないで」という連想によりこのドアの奥には入らないでほしいという行為者のメッセージを読み取ることが出来ます。

 

この辺になると完全に補修との境目があいまいになってきますが、壊れてますよということのアピールであるそう。

 

これはちょっと趣が違いますが、電気がついているお店の存在によって漸くやってないお店がようやく可視化されるパターン。何もしないことで「やってない」を伝える手段もありますね。文字にしなくても、積極的に何かのメッセージを出さなくても非稼動の状態は伝わるものです。

街を眺めてみると、文字を使わずモノの状態だけで相手に意図を伝える場面が結構あるのでないかと思います。また何か集まったらご紹介したいと思います。