ホイールカバーを探せ!

ブイ~ン!ブロロロロ!ブイーン!

みんなー助けてくれー!!!ぼくのホイールカバー知らないかー!?

4皿全部ないんだ!

水木しげるロードに向かってる途中に落っことしちまったみたい!!!

見てないかな!?丸い蓋みたいなやつ!

こういうのね!暇だったらさ!探しに行こうぜ!

道すがらコンビニでフークレエとかたまご蒸しパンとかのエアバッグっぽい菓子パン奢るからさ!

 

ありがとう!暇なんだね!大丈夫ぜったい見つかるはずなんだ!来た道をそんままひきかえしゃあいいだけなんだからさ!行くぞ!GOGOGO!!!

ビュン

 

 

ゴーーーー

 

 

グルグルグルグル

 

 

サササ

 

ブイ~ン

っとまあ、こんなかんじがしばらく続くかもね!ホイールカバーってそんな簡単に見つかるもんじゃないし、気づいてたらなくなってたからどこで落としたとか心当たりもないからさ!!!

ア!!!!!

 

 

そうだ!ホイールカバーが見つかるまで退屈だろうからさ

「運転してるときあるある」をアクセル全開で発表してこうかな!

あるあるあるある!って頷きすぎるだろうからエチケット袋用意しときなよ!しっかり掴まっとけよ!いくぞ!

 

 

 

あるよね!牛角!

完ぺきなつかみだ!幸先いいね!もういっちょいくぜ!

 

あるよね!静電気くらっちゃいそうな滑り台!

もういっちょいくぜ!

!?あらら!?やっちまってね!!!?

むむむ!でもこれはぼくホイールカバーじゃなさそうだな。

他車が落としたやつだろうね!よかったーー!

ほんじゃあ残りのあるあるを消化するから気を取り直してもういっちょいくぞ!

ソーレ!

 

改行テキトーでごめんね!

!!!

ピタリ

赤信号なんで止まりますね。

ビックスクーターのノーヘルヤンキー、ドラレコにおさめたりましたわ!

あら!!!あれは!!!

ホイールカバーだ!だがぼくのではないね!

裏返しになったホイールカバーを見つけたからなのだろうか、それとも素行不良のビックスクーターを録画したからだろうか、なぜか気運が高まってきたぼくは、あるあるを言う暇をもらえぬほど、いろんなホイールカバーと相次いでエンカウントした。

だが、いずれもぼくの車輪に合うものは存在しなかった。

 

真ん中に冠マークのあるホイールカバーは2枚見つけた。

 

同じ場所で寄り添う珍しいケースも見つけた。

分譲地の看板の下に、偶然なのか人為的なのかわからないが、しらじらしく設置された一枚を見つけたが、それもぼくのものではなかった。

 

「もうあきらめよう」

 

撤退を決意させるに十分な出来事が起こってしまった。

それもホイールカバーによって。

 

!!!

!!!?

にやけるホイールカバーと出会ったのだ。

すぐさまぼくはとっておきの「運転してるときあるある」をぶつけた。

文字の解像度がモロモロになってて見えづらいから言い直そう。

 

 

共感のしすぎでうなずきが止まんなくなって、ゲボ出すかと期待したのだが効果はみられなかった。

ぼくは逃げていた。いつものように苦しいことから逃げた。

戦闘画面から抜け出すとあたりはすでに暗くなっていた。

先のバトルを境に、ただのホイールカバー探しが、不本意にも落伍車の敗走に変わってしまっていた。

そんな敗残者が辿る逃げ道にもホイールカバーはある。どうせそれも自分のものではない。

一瞥だけはくれてやって無心で通り過ぎていた。共感されなかった事実はどこまで引きずり続ければ忘れられるのか。

冠のやつは計3枚となった。冠は外れやすいのだろうか。

『共感のないものに価値など無い』

いつかの自分に与えた訓戒が、刻まれた場所でひりつき、給油口に酒を注がれたわけでもないのに無謀な放言を独りごちていた。  

てかそもそも、ホイールカバーなんてぼくの車輪に付いてたっけ?

 

抱いてはいけない疑念のような気がしたのはそれが図星だったからだろう。ハナっからなかったんだとしたら、そんな間抜けなことはない。 ぼくはなにを探していた?

 

これ以上状況が悪化することはないだろうと思ったところに雨って、ほんと。降りやがるよね。だが、この泣きっ面に蜂なら歓迎してやろう。泣きっ面をカモフラージュだ。

 

唐突な雨に、宿る場所を探すカラスを見つける。

 

ぼくもこのまま帰ろう。

 

そう思ったが、遺恨を残したまま帰れるわけもない。

気づけばぼくは、最後に残しておいた「運転しているときあるある」をカラスに投げつけていた。

 

 

 

 

 

カーもcarも可も不可も言わず飛ぶカラス。

轢いて天窓あけたろか、と廃車でも思いつかないような悪態を吐こうとした腐りきったぼくに

 

朝日が降り注いでいた。

 

はたと雨もやんだ。

ぼくは共感されたのだ。

カラスとにやけるホイールカバーには届かなかったが、世界が、今日というこの日のすべてが共感してくれている。

このまま東を目指そう。

あれが、あの朝日がぼくが探していたホイールカバーだったんだ。

 

といったかんじの気恥ずかしいメルヘンエンドな落とし方はやらねえ。だってぼくに合うホイールカバーならみつけたんだ。

 

これだ!!!

 

 

不法投棄されてた扇風機から取り外した羽カバーだ!!!どうだ!!!

 

 

 

バイバーイ!!!